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最適な「動線」とは③

みなさん、こんにちは。前回の記事では「優秀な設計者にプランの作成を依頼」する事がとても重要だと書かせて頂きましたが、他にも大切な事があると感じる次第なので、もう少し「動線」というキーワードについて考えを述べて行きたいと思います。まずは結論から。ここでお伝えしたい大切な事とは「マイホームの設計要望(希望)を的確に設計者へ伝えられているか」という点です。

 

そもそも適切・最適な動線とは、「実際に住まわれる方にとって」適切か?という事がとても重要です。あるご家族様からすると「使い勝手が良い動線」でも、住まい手が変われば、趣向性や暮らし向きも変わる為、他のご家族様からすると「使い勝手の悪い動線」に変化してしまう事があります。それはご家族様ごとに、家族構成やご年齢、奧様の家事の仕方・方法、収納する物や量、ある特定のお部屋の有無などが当然のように変わる事によって生じる問題です。ですから設計者は、その家に住む「ご家族様(注文住宅の発注者様)に合わせて」最適な動線となっているのか?という事に細心の注意を払って建物のプランを検討します。

そこで設計者として、とても重要なのがお客様への「設計ヒアリング」。通常は設計に入る初期段階として、一番最初にお客様へ設計要望のヒアリングを行い、その後に建物プランを検討する事となります。そして、お客様からすると設計ヒアリングの際に①「的確に自分の希望を伝えたのか」②「要望に優先順位を付けたのか」この2つがどれだけ「設計者へ適切に伝わったか」という事がとても重要となります。

 

まず、「的確に自分の希望を伝えたのか」についての重要性。

これはある一種、要望を伝えた時に「ニュアンスの取り違え」が生じていないか、という事についての問題です。

例えば仮に・・・あなた自身が設計者となって、お客様へ設計要望のヒアリングを実施している場面を仮定で想像してみて下さい。ヒアリングの打合せの中で、お客様からこんなご要望を頂きます。「洗面所と脱衣所は別室にして下さい」・・・あなたはそのご要望について、設計者としてどう感じ、どう考えますか?

通常は「洗面所と脱衣所は別室にして欲しい」というお客様のご希望を頂戴した際は、そのご要望をプランの中に100%反映させないといけない、と感じると思いますし、「はい、分かりました」とお客様へ、そのご要望を承った旨をお答えするかと思います。

 

しかし仮に、「それは何故ですか?」とお客様へ質問を投げ返してみたと仮定します。すると・・・次のようなお答えが返って来ます。

A:「絶対に」「洗面所と脱衣所は別室に」「したいんです」

B:「可能なら」「洗面所と脱衣所は別室に」「出来ればと考えています」

C:「迷い中だけど」「洗面所と脱衣所は別室に」「しても良いかなと思っています」

D:「好きではないけど」「洗面所と脱衣所は別室に」「した方が良いとネット記事で読みました」

という上記の4パターンの回答でした・・・あなたはそのご要望について、設計者としてどう感じ、どう考えますか?

 

私であれば・・・

A:「絶対に」との事であれば100%優先的ご希望であり「必須事項」と考えます。

B:「可能なら」であれば70~80%ぐらいのご希望?「極力叶えよう」と思います。

C:「迷い中だけど」なら50%程度だろうか・・・「優先度はそう高くないのかな?別の選択肢もありえるか?」と感じます。

D:「好きではないけど」なら0~20%?「そもそも好きではないのであれば、やめておいた方が良いのでは?・・・他にもっと良いレイアウトや選択肢があるはずでは?」と考えてしまいます。

 

皆さんはどう思われますか? ここで言いたいのは、「洗面所と脱衣所は別室にして下さい」というお客様のご要望に対して、お客様の中にある「本当の真意」を明確に共有出来ていなければ、設計者として判断を誤る可能性は相当高い、という事実についてです。最初はプランの中に100%反映を、と感じたとしても、上記のCやDの方のような真意をお聞きした瞬間に、100%が→50%に変化する事も、100%が→0~20%に変化して、設計者としてそのご要望を「却下」する事も十分ありえます。そして、そもそものお話ですが、仮に「それは何故ですか?」と聞き返さなかったとしたら・・・はたまたお客様が、そのご要望のニュアンス(真意)をお話頂けなかったら・・・最初の「洗面所と脱衣所は別室にして下さい」というお言葉だけを信じて=100%!! という誤った判断に基づいて建物プランの設計を進めて行く事になったでしょう・・・。

そして設計者にご要望が曖昧な伝わり方をしてプラン設計が進んだ場合、「あまり好きでない」はずの「洗面所と脱衣所が別室の」マイホームプランが至極当然のように提示され、お客様は「このプラン・・・あまり好きではないなぁ・・・」という感覚に陥ると思いますし、設計者へ「洗面所と脱衣室が分かれてるのが気になるので・・・この箇所のプラン修正をお願い出来ますか?」と伝えると、設計者側からすると「え・・・?何故に???・・・ご要望の通りに設計していますけど・・・?」と感じられてしまう為、お互いに「この人・・・大丈夫か?」と疑心暗鬼に陥る事も十分あり得る事です。このように「ニュアンスの取り違え」が起こればは、下手をすればお客様と設計者双方にとって悲劇を生じさせる原因となります。

設計者は、お客様のご要望内容と、その微細なニュアンスによって、判断基準や価値基準を180度変えるので、「ご要望」+「何故そうしたいのか」「その理由は」という明確、そして的確なご希望を設計者へ確実に伝達する、という点を心掛けて頂くのは大変良い事かと思います。(優秀な設計者ほど、ヒアリングを大切にする傾向が強いので、設計者側も勘違いなどが無いように十分な注意を払うとは思いますが)

 

さらに「要望に優先順位を付けたのか」という事も重要です。

通常のお客様で、設計要望は1項目しかない、というお客様はほぼ居られないと思います。少なくとも10~20、多い方だと100項目ぐらいのご要望を頂戴したりするケースもあります。

そんな中で設計者は、100項目のご要望を頂戴すれば、その100項目のご要望全てに対して優先順位を確認し、順位の高いものから最優先的にプランに反映させて行くという作業を設計の中で行います。ここで大事な事が次の2点。1)優先順位が勘違いで伝わっていないか、2)ご要望同士がケンカしていないか、という事です。

 

もし仮にご要望の「優先順位の勘違い」を起こした場合。お客様にとって優先順位の低いご要望ばかりが優先してプランに反映されてしてしまうと、プラン提案を受けた際に、お客様は・・・何コレ?私達の要望があまり反映されていないケド??どうなっているの??という「何コレ?プラン」にしか感じられないと思います。この状態では「動線」が良いとか、悪いとかより、全然それ以前の問題です。でもこの状態はお客様にも多少の責任があるかも知れません・・・。(的確に確認していない設計者にも、かなり重い責任がありますが)

それぞれのご要望ごとに優先順位を付ける行為や、ご要望に優劣を下す判断は、そもそも、設計者自身で最終判断する事は絶対に不可能です。何故ならそのご要望自体は、「お客様ご自身」がご希望されてある事であり、設計者自らが希望した訳では全然無いですし、その要望の価値の優劣はあくまで「要望した人」にしか比較が出来ないからです。ですから、ご自身の「ご要望ごとの優先順位を的確に設計者へ伝える」という事をお客様ご自身も重要事項として心掛けて頂きたいのです。

 

仮にご要望ひとつひとつが「不明瞭な内容」で「優先順位が間違って」設計者へ伝われば、設計者はその瞬間から、適切な判断基準を完全に見失ってしまう事に直結します。これは雲の中を飛んで飛行する飛行機のようなものです。「カッコ良い」「使い勝手の良い」「住みやすい動線の」「お客様に喜んで頂ける住宅を設計」するという、飛んで行くべき「目的地」だけはハッキリと分かっていますが、如何せん目のに広がるのは、白いふわふわとした前が見通せない雲の中。そもそもどの方向に向かって飛べば良いのか、十分な経験を積んだ優秀なベテランパイロットでも、そう容易に判断はつきません。そこで飛んで行くべき方向を唯一指し示し、どう操縦するかの判断基準となってくれるのが「お客様の的確なご要望」であったり「ご要望の優先順位の明確な伝達」という存在です。これは飛行機の操縦席にある計器類みたいなもので、優秀なパイロットは計器が差し示す的確な方角や数値だけを頼りに、自分が飛ぶべき方向を見出し、目の前が全く見えなくても卓越した操縦で目的地に辿り着く事が出来ます。しかしこの計器類が狂っており、完全に間違った情報・方向を指し示せば、いくら優秀なパイロット(設計者)でも、間違った判断しか下せない結果になります。そして最後には、とんでもない方向へ向かって飛行し、そもそも行きたかった目的地に辿り着く事は絶対にあり得ません。・・・この飛行機のパイロットの例えは、設計者の方であれば、なるほど!!間違い無い!!と、感覚的に深く共感頂けるものと思います(笑)

そう、正に悪天候の中、安全な空の旅を演出するのは卓越した能力と経験・知識を有した優秀なパイロット(設計者)の仕事ですが、どの空港(目的地)に向かって飛行するべきなのかは、その飛行機の客席に座る、建て主様、あなたご自身の中にしか答えは無いのです。ですから、設計の要望の優先順位を丹念に見直してヒアリングの打合せの前に、本当の意味でのご要望の優劣を決定して頂く(目的地を選定頂く)、という事は正に重要です。優劣の判断内容が的確では無い場合、上述のように、目的地とは違うあさっての方角に向かって飛行した結果、何コレ?プランが提示される事に確実になるでしょう。 Continue reading

最適な「動線」とは②

前回の記事に引き続きまして、改めて「自分の家を設計」する段階になった時の「最適な動線」のあり方、考え方について重要だと思うところを書いて行きたいと思います。

まず最初に・・・実際の間取りにおける設計上の「動線」について、どんな動線形状を採用するのか?どんな配置計画にするべきか?という問題を考える上で・・・そもそも、大多数の住宅会社・ハウスメーカーでは設計担当が在籍し、その担当者がプランを企画・検討・設計した上で、その後に間取り・プランをお客様へ「提案」する、という方法で設計の打合せを行っています。ですから、お客様がご自身で間取りを設計しないこのようなケースの場合、「動線配置」についても同じく、お客様が主体性を持って計画する訳では無いと言えます。

もちろん事前に、「〇〇の部屋同士を近づけて配置して欲しい」とか「〇〇のスペースを通り抜けられるようにして欲しい」などといった「設計要望」としての動線配置の意向を、住宅会社や設計担当者へ伝えはしますし、プラン提案後でも、気になる配置や動線の箇所があれば指摘をして、プランを一部修正して貰う、という事は当然しますが、「ご要望」や「ご指摘」から間取りにおける「適切な動線」とは何か?を実際に考察し、プランの中にどう落とし込むか、及び修正を加えるかを最終判断するのは「設計者」です。

ですから逆説的に考えると、機能性・利便性が高く、使い勝手の良い「動線」を有する素敵でお洒落なマイホームをつくる為には・・・最短距離で考えると、「優秀な設計者」と出会い、「その設計者に間取りを設計して貰う事」がとても重要です。

 

そこでまずは「優秀な設計者」と、いかに出会うかについて・・・これはとても簡単です。その秘訣は・・・住宅会社・ハウスメーカー各社の「設計者のスキルを比較」すれば良いだけです。と書くと、どうやって比較するのか?となりますが、次に書かせて頂く事を是非やってみて下さい。

まず、検討中の住宅会社各社の営業担当者にお願いをして、「過去に実際に建てた住宅(実棟)の建物図面を3~5物件程度見せてもらう」ように依頼をして下さい。そして、これを比較・検討中の住宅会社各社ごと、それぞれに依頼をしましょう。ちなみに、ここで書く「建物図面」とは、住宅会社のカタログとかパンフレットや冊子に掲載されている物件の間取りの事ではありません。一般のお客様が実際過去に建てられて現在住んでいる物件の間取り・図面の事を指しています。そんな建物の工事用の図面でも良いですし、お客様への提案の際に実際に使われたプレゼン図面なら尚良し、でしょうか。

カタログや冊子に掲載されている物件は、展示場やモデルハウスの建物がメインとして掲載されているケースも多く、モデルハウスは優秀な外部の設計事務所へ外注設計をし、通常物件の建物は自社の設計士が設計、というケースも実際は多数あるので、情報としてはあまり役に立ちません。必要なのは「実際自分が設計・提案を受ける際に対応してくれる設計者のスキル比較」ですから。

また併せて、ご自身が希望しているマイホームの「設計要望の要素」を織り込んで図面を見せてもらうように依頼すると良いでしょう。例えば、「30坪」の「平屋」とか、「2階建て」の「2世帯住宅」とか、主となる要望ワードを織り込んで、お題をつけ、「過去の類似の物件の図面を3~5件程見せて欲しい」と依頼をすれば、次回のお打合せの際でも、過去の物件の図面を見せて貰える事になると思います。(※間取りには、コンプライアンスやプライバシーの問題が生じるので、通常他のお客様へ図面等の資料は渡せません。なので、あくまで「見せてもらうだけ」です)

これで何がしたいのかと言うと・・・建物のプラン・図面には「設計者の力量が如実に表れ」ます。本当に能力の高い設計者が描いた建物の図面は、プロが見ても、素人が見ても、パッと見ただけで、「何故か分からいけど、本当に綺麗な間取り・図面だな」と素直に、感覚的に感じ取る事が出来ます。また、細部まで整然とお部屋やスペースが配置されているのも併せて見て取れます。このような間取りにおいて、プラン上の「動線」を良く観察してみると、しっかり検討された、「緻密で使いやすい動線解」が描かれているケースがほとんどです。

 

一方、設計者に実力が無い場合、お部屋が乱雑に配置されていたり、無駄で不思議な謎空間が多数あったり、建物がボコボコと歪になっていたりと、図面自体が・・・少し語弊があるかも知れませんが、とても汚いです(笑)そして、図面上で汚い建物が完成後に綺麗な建物に化ける、となる事がある訳も無く・・・そして「動線」の配置計画も大抵、歪でチグハグな物となっています。これは私達の経験則上ではありますが、図面上で美しい配置の建物は、新築完成後も美しく、機能的で使いやすい。でも、図面上で汚い建物は完成後も歪な上に、使い辛く住みにくいです。

このようにして、住宅会社の各社から過去物件の図面を見せてもらい、10社でも比較しようものなら、30~50物件もの図面を見る事になります。そうすると、住宅会社それぞれに、設計陣に結構な力量の差がある事に気づいてしまうでしょう。多少面倒臭い作業ではありますが、一生に一度の大事なマイホームですから、やってみて何ら損は無いかと思います。また、実際にやってみると、ここで書かせて頂いている事についても、少なからずご納得頂けるのではないでしょうか(笑)そして、最終的には、汚い図面を見せられた住宅会社ではなく、一番流麗な図面を見せてくれた住宅会社を家づくりの、設計のパートナーに選びましょう(笑)そして、そんな住宅会社はあなたご自身のご自宅の設計・提案の際にも、ちゃんと優れたプランを提案してくれるはずですし、使いやすい、暮らしやすい「動線」をちゃんと企画・設計してくれる事になるでしょう。

 

また、参考までに・・・何を根拠にこのような事を書いているか、というと、私達が日頃目にする「建築家」の先生がプランニング・設計した図面です。「優秀な建築家」の先生が設計した図面と、例えば「設計に不慣れな営業マン」や「経験の浅い設計部の人」「プランが下手な建築士」が設計したプランを見比べた時に・・・本当に・・・見るからに全然違う!! 同じ「プラン」と一括りにするのが本当に失礼で申し訳ない(汗)と感じてしまうぐらい、前者の「建築家」の先生が書く図面、本当に、見た目からして綺麗なんですよね!! そして動線の解も本当に見事で美しい!! 一方、後者が設計した図面の場合は・・・「あぁ・・・はい・・・。」(内心、何だコレは・・・?)という感想しか出て来ない図面になってたりします。

ですから「美しい図面である」という事実は、逆に考えれば、どれだけ「緻密な設計をしたか」の裏返しでもあり、もちろん至極当然のように、お客様の各種のご要望や、敷地形状、敷地面積、日当たり、周囲の眺望、建物構造、法的規制などの諸条件に加え、「最適な動線解」を緻密に紐解いて建物プランに落とし込んだからこその結果・成果であると言えるのではないでしょうか。

つまりは、最適な「動線」を考える上で=「優秀な設計者を選定」し「優秀な設計者にプラン作成を依頼」する事が最も重要であり、本当に欠かせないスキームになります。是非皆さんも、本当の意味で自分に最適な「動線」を提案してくれる「優秀な設計者」「住宅会社・ハウスメーカー」をしっかり比較しましょう。

本当は、最適な「動線」を紐解く上で、もう一つ考えておくべき大事な要素があるのですが、これは次回の記事で改めてアップさせて頂きたいと思います。

最適な「動線」とは①

みなさんこんにちは。この暑い厳暑の季節、いかがお過ごしでしょうか。久留米市では今年も7月初旬に梅雨の豪雨によって、近年度重なる水害に加え、田主丸町の方では土砂災害にも見舞われてしまいました。被害に遭われた皆様に於かれましては、謹んでお見舞いを申し上げますと同時に、一日も早い災害からの復興と復旧を切に願ってやみません。

 

さて、本日は設計の中で良く使われる「動線」というキーワードについて少し考察してみたいと思います。

この「動線」という言葉は、お客様からの設計要望の中で頻繁に出て来るワードです。例えば、「効率的な家事動線」とか「使いやすい水廻り動線」とか「動線に配慮した間取り」とかいった感じです。そもそも「動線」とは家に住まれるお客様が暮らしやすいように企画・設計された、人が家の中を移動した時に、ある特定の空間・部屋・出入口等における配置の相互の関係性を表しており、何かと何かの部屋・スペースが近く、近接していると=使いやすくて良い動線、という解釈が普及しているのかな?と感じます。

適切な「動線」とは設計者それぞれの趣向性・判断による解釈と、お客様それぞれの個々人における間取りの優先順位や暮らし向きから来る「正解」があると思いますので、一概に何が正しくて、何が間違っている、と断じうるものではありませんが、何かと何かが近ければ動線上は正解でgood!!、という単純解は少し乱暴で違うような気もします。

 

そもそも「動線」さえ良ければ=良い家になる、というのも違う。良い家という定義もこれまた様々ありますが、住宅(家)が個々の家としての特徴・個性をそれぞれ差別化する、個々のアイデンティティを決定付ける要素は、「間取り(形)×色(カラー)×素材感(質感)」の3要素かと思います。

この3つのうち、どれか一つでも違えば全く異なった建物となりますし(例えば同じ間取り(形)のお部屋でも白い壁紙を貼った時と、黒っぽい壁紙を貼った時とでは、そのお部屋の雰囲気は全く異なりますし、同じ白でも光沢感のあるキラキラした白と、マットで全く光沢感の無い沈んだ白とではお部屋の雰囲気は異なる)そのそれぞれが適切に融合して絶妙なコンビネーションを発揮するからこそ最終的に、デザイン性に富んだ快適な住空間になるのでは、と感じます。

そして、「動線」は上記の3要素の中で「間取り(形)」を構成する中の1つの要素や考え方に過ぎません。ちなみに、「間取り」を構成する要素は沢山あるので、列挙すればキリがありませんが、例えば・・・「広さ」「用途」「高い・低い」「明るい・暗い」「設備・機器」「窓」「外観」「視線」とかいった具合でしょうか。そしてこの中に「動線」という要素が出て来ます。

また「動線」は上記のような形を構成する要素の中でも、取り分けて「機能」の部分にかなり特化した要素なので、ある「特定の人」が、住宅を「目的を持って」かつ「使用」する時に、「効率性」「機能性」「快適性」を確保する為に設計・配置計画上で取り入れられる考え方になります。そして先述のように、むやみやたらに何でも近ければ正解、という訳でもなく、遠い動線の方が正解というケースも多数見る事ができます。

 

例えば仮に・・・ご主人様のお友達が夜頻繁に家に遊びに来る生活環境の方とかでは、リビングとか、個人の部屋とか、客間とか、ある特定の、お友達が集まるお部屋と、お子様の寝室とか奥様が休む主寝室という空間は、なるべく遠くに配置されてた方が良いかと思います。楽しく盛り上がるご主人様とお友達の声が近すぎると、夜の安眠を妨げるかも知れず、また寝巻姿の奧様がご主人様の友達と遭遇する確率を下げる為には、あえて物理的に距離を離す事でそのリスクを軽減する事が可能となります。

同じように楽器の演奏が趣味の方であれば、リビングと楽器演奏の趣味室(楽器室)は遠い方が良い。昼間テレビを見る真横や隣の部屋で楽器を演奏されても、テレビを見ている他のご家族の方にとっては邪魔でしかなく、お互いに気を使い合わなければならず、結果、好きな時に趣味を楽しむ事も出来にくい状況が生まれ、何かとぎこちない住環境になります。

他にもLDKからトイレの配置が近いと、移動距離としては近くて便利で、普段家族で過ごす時は良いのですが、あまりに近すぎると特に奥様などはお客様が来訪した時などはトイレを使う事に少し引け目を感じるかも知れません・・・。玄関ホールにあるトイレなども同じように外部から訪問者が来た時は、家族は使いにくい感覚・心理状態に直面します。

こう考えると本来の適切な「動線」とは=「適切な距離」の事を言うのだと思います。近いものは近く。遠いものは意図的に遠く。中間地点にあるべきものは、双方から離れすぎずに、でも近すぎず。その適切なバランス、距離感、歩行距離の適切解が=良い動線なのだろうと思います。

それでは具体的に、設計上で良く使われる「動線」とはどのようなものがあるのか、動線の「形状」から見た代表例を挙げておきたいと思います。それは次の4つ。I型動線(ストレート動線)、L型動線、ロ型動線、放射状動線(一般的な呼称ではなく、個人的に勝手にそう呼んでいるだけなのでご了承下さい)が代表例かと思います。そしてそれぞれが、利点と欠点を有しているので、適材適所に、お客様のご要望に沿って適切な動線の解を選択する必要があります。下ではその特徴も併せて記載したいと思います。

 

【I型動線】

奥へ奥へ真っすぐ通り抜けて行くタイプの動線です。一番基本的な動線でもあります。この動線は真っすぐ突き抜けて歩いて行く動線なので、非常にシンプルな人の動きを誘発する動線です。欠点を上げるとすると、歩行距離がいくぶん長くなる所でしょうか。また動線と視線が真っすぐ同じ方向に向けて突き抜けるので、奧の部屋やスペースまで見通せてしまう。これが良い方向に働く事もあれば(プライベートな空間は遠くまで見渡せてOK)、玄関廻りなどで使用すれば、来客者から奥の部屋まで視覚的にも抜けてしまい、プライベートを侵される危険性もあります。

【L型動線】

これはI型動線とほぼ同じです。基本は真っすぐな動線でI型動線と機能的にはあまり差はありません。ただ前述のように、真っすぐな動線の方が配置上使いやすくプランを形成しやすいけれど、奥まで視線を誘導したくない(見られたくない)時などに使用し、動線上1箇所以上の箇所を90度に折り曲げて、物理的に視線をシャットアウトする時などに用いたりします。

【ロ型動線】

このパターンの動線は別称、回遊動線と呼びます。そしてこの動線=使いやすい動線の代表格によく上げられます。ある特定の部屋や機器・家具などを中心として、その周囲をぐるっと一周歩いて回れるのがこの動線配置の特徴です。例えばアイランドキッチンなどで、右側にも左側にもぐるっと回り込める、などのパターンが代表的な例でしょう。この動線のメリットは目的の位置までの移動距離を短縮出来る可能性がある事、移動方向に多様性がある事だと思います。I型やL形のように少し長めの距離を一方通行に歩いて行って戻って来るという動作を排除する分、行き止まりが無い回遊動線は、使い勝手や機能性を向上させる可能性を秘めています。逆にデメリットとしては回遊する通路部分を多数確保する必要があるので、廊下がいっぱい出来てしまい、結果的に建物の面積(ボリューム)が大きくなる事、逆を言うと建物の設計ボリュームが決まっている場合などでは、お部屋の面積を削る必要性が生じる場合などもあります。また、人の動きが一定方向ではないので、照明やスイッチなどの配置計画がしにくい事、行き止まりが欲しいプライベートゾーンでは動線配置として使用しにくい事などが挙げられるかと思います。

【放射状動線】

ある1箇所の立ち位置を基点として、放射状に動線が拡散する動線配置です。頻繁に使う動線計画ではありませんが、良くあるのがキッチン。奥様のご希望で、キッチンに立った時にキッチンから、ダイニングにも、リビングにも、パントリーにも、洗面にも、ランドリーにも、それぞれに直接近距離で移動してその部屋にアプローチしたい、といったご要望が上がった時などです。この時はキッチンから放射状に各部屋やスペースを隣接させて配置します。メリットとしては特定の箇所、上記の例で行くとキッチンからは最短距離で各部屋へ移動できる、というのがメリットですが、その他の部屋同士(ダイニング・リビング・パントリー・洗面・ランドリーなどの各部屋)はそれぞれの動線が寸断される傾向にあるので、かえって部屋同士の距離が離れたり、移動距離が長くなる事も想定されます。

 

上記以外にも動線形状はあると思いますが、キッチリ計画されているなぁ・・・と感じる建物プランや間取りは往々にして上記のような動線配置を駆使しており、また、どれか一つの動線形状だけを採用して完結している、という訳でも無く、様々な動線形状を適材適所にMIXして使用しているケースがほぼ大多数かと思います。住宅の使い勝手や機能性を高める上で「動線」はとても重要ですからご参考頂けると幸いです。

次の記事では引き続き、自分の家を設計して貰う時の「動線」のあり方、考え方についても考察したいと思います。